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今どきの日本酒事情(2015.10.16 FRI.)

灰色の空のキャンバスに、墨絵の『龍』を描いては消え‥‥。
黒雲が今にも竜巻など悪さをするのではないかと、ハラハラする連休を過ごしました。10月半ばの小連休は生憎の空模様でした。

にもかかわらず、連休前半には、秋田の地酒を求められるお客様が訪ねてくださり「秋田酒」の酒談議で会話も弾みました。嬉しいことです。

つい数年前までだったような気がします。東日本では新潟県の「越乃寒梅」さんが淡麗辛口の地酒ブームを率いて、都会で騒がれていたのは。
濃醇で甘口の酒が主流だった秋田を尻目に、淡麗辛口でなければ論ずるに値しない。常識だ。とさえ言われていました。

人気は沸騰して、畢竟需要と供給のアンバランスが生み出した高値が付けられて、それでも欲しいと引っ張りだこ。遂には蔵元さんが新聞1頁全面に、「私たち酒蔵が望んでいることではありません。」と、異見広告を載せたほどでした。

欲しくても手に入らない「幻の酒」が新潟には存在(?)していたのです。
淡麗辛口だけが酒じゃない!と思いながらも、秋田酒を商う者としましては正直、新潟が羨ましかった。
同じ東日本。「『米の秋田は酒の国』を標榜する秋田にも、幻の酒があったらいいのになあ!」が仲間内の愚痴になっておりました。

当店のキャッチフレーズはそのころから
幻の酒はありません あなたのまだ知らない 美味しいお酒があります です。
有名ではないけれど、秋田の旨い酒をなんとか飲んでもらおうと機会あるごとに情報発信していたことを思いだします。キャッチフレーズは今もそのままです。

あれから時が経ち、マスコミは「今、新しい 日本酒ブームがきた。」と喧伝しています。
確かに、最近日本酒事情が替わってきたことを実感しています。

旨いは甘い。身体へのダメージを抑えるためにもアルコール度数が低くて酸のある酒。お洒落なラベル。白ワインのようにバーのカウンターでワイングラスで飲まれる酒‥‥などなど。
まず若者や初心者が興味を持つようになり‥‥試しに一度呑んでみた旧来の酒ファンも開眼して、家庭の冷蔵庫にストックするようになる。
且つて小麦粉食文化がじわじわと浸透してきたように、日本人の味覚に少しづつ変化が起きている。アルコール耐性のない遺伝子を持つ多くの日本人は濃くて強い酒が苦手なのではないでしょうか。気軽に飲める酒がようやく世間に認知されて、ほっとしているかもしれませんね。

ブームを起こしたのは若い世代の蔵元さんたちです。
新しい日本酒に挑戦し続けて来た酒蔵は日本各地にあるけれど、秋田の『NEXT5 グループ』も代表的なひとつです。
『NEXT5 グループ』率いる新しいSAKEの時代が到来したと、世間が認めた。と、いうことでしょうか。戦前、酒は当然純米で原酒でした。出来た酒は玉割りといって酒を飲み易いぎりぎりまで水で割って売られたとか。アルコール度数は高くはない酒です。あ~、それで一升酒を呑むと豪語する強者がゴロゴロしていたんですね。 

日本酒は(本来)どうあるべきなのか?
原料米、麹菌、酵母、仕込み方法、などなどあらゆる角度から検証しなおして、日本酒の理想の姿を体現しようとする試みが、今正に現在進行形で続けられているようです。
む~、これからどんな進化をしてゆくのだろうか?
まるで求道者(真理を探求してゆく?)の様。クリエイティヴな仕事に携わる人たち全てに期待される好ましい姿勢なのだと思います。

そんな歴史の変わり目に立ち会っている、どきどきする不思議な感覚です。
私、長生きをして、これから10年先の日本酒の未来を見てみたくなってきました。 新しい日本酒ブームのお陰で、零細の我が家業も、ほぼ日本酒1種でなんとか成立つようになりました。有り難いことです。

余談ですが私、親から受継いだDNA、アルコール耐性はバッチリです。
でも身体にダメージを受けることはあまりしたくない。
出来るだけ穏やかな食物を身体に取り入れたい。
そんな生活信条を実現して来たので、この年齢まで肝機能の数値は健康そのもの、小学生並みでございます。
残り人生の時間を考慮にいれましても肝臓のキャパシティは充分ございます。
無理なく呑んでいられるお酒の出現を、これから大いに楽しむつもりです。

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さっそく楽しんでみました。
しかも、お土産にいただいた岐阜は中津川名物「すや」の栗きんとんを食べながら‥‥。
共通するのはほどほどの甘さと繊細な味わい。
これが不思議と合うんですよ!


by hanatabi-haruko | 2015-10-16 14:19 | 雑事