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想い出の帽子(2011.05.03 TUE)

ときどき

最近頭部頭髪に自信がなくなったせいもあって、夫も私も帽子を一年中手放せません。陽射しも徐々に強くなるこの季節、そろそろ帽子を買い求めなければと考えています。
ただ被れば良いと言うのでは芸がありませんし、かと言ってセンスが試されるだけに、素敵に被るのはなかなか難しいものです。
想い出の帽子(2011.05.03 TUE)_b0226219_13521197.jpg
冬に旅したミラノの街。スカラ座前の広場からミラノ大聖堂前広場に抜ける買物広場ガレリアの入口に、有名な「ボルサリーノ」の出店を見つけました。

想い出の帽子(2011.05.03 TUE)_b0226219_1354916.jpgショーウインドーのお洒落なディスプレーに魅かれて、それ以上に懐かしい気持ちを抑えきれず、店内に入ってみました。


想い出の帽子(2011.05.03 TUE)_b0226219_13552487.jpg私が無意識のうちに探していたのは、中折れのソフト帽です。
亡くなった父が、外出する時に決まって被っていたからです。


今から50年以上も前、戦後の物のない時代、父は外出時には三揃えのスーツ、頭にはソフト帽というスタイルを通していました。
父が特にお洒落と言うことではなく、2度目の疎開先では衣服を新調する余裕などなくて、東京で着ていたものを大事に着続けるしかなかったということなのだと思います。
とは言え、田舎町で父は結構目立ち、小さい頃の私はそれが嫌でした。
残されたアルバムに、背筋を延ばしカメラに構える父を見ると、今では
ダンディーだったなあと素直に思えるのですが。

結婚前、夫が初めて実家の父を訪ねた時、玄関を入って直ぐ左側廊下の突き当たりの帽子掛に、「ボルサリーノ」は何時もどおり掛けられていました。
緊張して辺りに気を配っていた夫は、直ぐに帽子に気がつき
「あの帽子はボルサリーノですか?」といきなり父に尋ねました。

「ボルサリーノ」を知っている人は皆無だったと思われる千葉県の田舎町でしたので、一瞬にして父の表情が和らぎ、その後の話がスムーズに運んでほっとしたのを覚えています。

ところが後日、父はその時の印象を私にこう言いました。
「おい、あいつは聡い男だから気をつけろ!」‥‥どこの父親もそうでしょうが、特に父は、娘の結婚相手に注文が多かったように思います。

想い出の帽子は、今は兄が大事に保管しているようです。

想い出の帽子(2011.05.03 TUE)_b0226219_13573385.jpg写真は夫の中折れのソフト帽です。
ボルサリーノではありませんが、60歳を過ぎた4年程前に買い求めたものです。まだ、被ったところを数えるくらいしか見ていませんが、何時かは粋に被ってみたいと思い続けていたのでしょうか?

 今回はウインドウショッピングに終わりましたが、ミラノを再び訪れる機会があったら、次回は迷わず「ボルサリーノのソフト帽」をお土産にしようと決めています。
夢で終わらなければいいんですけれど‥‥。   (haru)
by hanatabi-haruko | 2011-05-03 14:05 |