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『出羽の雫』というお酒(2012.02.23 THU.)

北国の春はまだまだ先と分っていても、太陽が顔を出す時間が少しづつでも増えてきたことに、ほっとしています。
雪が降ったり止んだり、曇天だったり晴天だったり、当たり前の繰返しの先に、待ちこがれている季節があるんだと、実感できる距離にまで漸くきました。(ベランダに毎日やって来るすずめも、元気で春を迎えられそうです)

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 ↑落語家のたまごだった「○○亭すずめちゃん」にいただいた手ぬぐいです。すずめのように、小ちゃくて可愛い女性でした。

本題の刈穂・昔生酛純米酒『出羽の雫』の話です。

25年も前の1987年の夏のことでした。
『秋田でさけしんぶん』の発行者でもあった仙北郡神岡町のアキモト酒店さんが、当店を訪ねてくれたことがありました。

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大手酒造メーカー全盛の時代でした。


当時、「米の秋田は酒の国」そんなキャッチフレーズがあったのを覚えています。
県内ではなんの疑問も持たれずに、「米どころ酒どころの秋田では、それは当然だろう」と受け止められていました。
では、100%秋田産の酒米だけで醸した「これぞ秋田の地酒」といえる酒があったかといえば‥‥む~??

「秋田の酒のスタンダードになるような酒」
「自信をもってお客様にお勧めできる秋田の地酒」が、ほしい!
アキモトさんと夫の(一途な)会話を、私は側で聞いていました。
必然の流れだったからでしょうか、その後話が煮詰まってゆき‥‥

酒米の有機栽培を引き受けてくれたSさん。
狭い地域社会の軋轢を承知で、蔵元に掛合ってくれた営業のOさん。
紆余曲折の後に、醸造を引き受けてくれた蔵元さん。
販売会に参加してくれた酒店さん。等々などなど‥‥沢山の方々の協力を得て、2年後の1989年、オリジナル酒第1号『出羽の雫』の誕生にこぎ着けました。
そんな経緯だったように記憶しています。

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名前をどうする。ラベルをどうする。コピーライターに頼んだり、書道家に書いてもらう予算などあるはずもなく、自前で用意するしかありませんでした。


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酒米を栽培してくれる農家のSさんの田んぼで。
並外れた行動力で牽引してくれたアキモトさんに感謝しています。
それにしてもみんな若かったなあ~


酒造りを知らなくても銘柄だけで売れる時代が長く続いていました。が
オリジナル酒は、説明してこそ飲んでもらえるお酒です。
醸造の様子をお客様に説明できたらいいのではないか。
仕込みの忙しい冬の酒蔵を頻繁に見学するようになったのは、その頃からでした。

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『刈穂蔵』さんに初めて伺った時、整理整頓された清潔な仕込み蔵に心打たれました。白壁に濃い茶の梁が美しい! その印象から作ってみたタピストリーですが‥年月を経て色褪せしました。


酒造りの行程を説明してもらっても、最初はチンプンカンプン。
質問すら浮かびませんでした。
唯一感覚的に分ったのは、「酒造りは子育てと同じ。」との、杜氏さんの例えでした。

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新生児の健やかな成長を願って着せる産着を思い浮かべて、麻の葉模様の刺繍もしてみました。
以来、毎年11月1日新酒『出羽の雫』の発売日には、このタピストリーを店内に掛けるのが、(私だけの)こだわりとなっています。



やがて、売り手には「飲み手と酒蔵の物語を結ぶ」という大切な仕事があるという自覚が生まれました。
その為には、「酒蔵との意思疎通」が必要です。
以来、物語を探して、活気のある酒蔵を訪ねることが大切な仕事の一つになりました。

米の出来具合から、仕込みの苦労話まで。酒質や味以外にも、飲み手に伝えたいことはアレコレあります。愛飲家の方たちとの酒談議は、お酒を更に美味しくするようです。

沢山の方々が支え続けてくださって、『出羽の雫』が今に至っていると、つくづく憶います。

近々「刈穂蔵」 で、販売会主催の「酒宴」があると言います。
私も久しぶりに酒蔵を訪ね、仕込み蔵のあの白壁の前に、又、立ってみたい‥‥そう思っています。
by hanatabi-haruko | 2012-02-23 15:11 | 雑事